ラウンダバウト

英語を教えています。自分の授業改善のためだったり、好きなモノ、コトをつづっていきます

すべての高校教師は「定時制」を1校以上経験すべきだ

 タイトルで分かる方には分かると思いますが、anf先生の過去の記事へのオマージュです。ありがたいことに前任校の卒業生から「コロナがおさまったら一緒に飲みませんか?」とか「相談したいことがあるんですけど」とかたまに連絡をいただきます。教員としての今の私のスタンスを作っているのは紛れもなく勤務していた定時制での体験です。そんなこんなで「時には昔の話を」ということで、これまでを振り返り、この先を考えるきっかけにしようと思います。それにしては過激なタイトルですが(笑)

 私の教員生活は「定時制」でスタートしました。といっても初任校でなく、非常勤講師の時からなんです。学部生時代から院生のときも、はじめは中学校を志望していたのですが、色々なご縁があり、院生の時に関東のとある定時制の高校で非常勤講師として働く機会を得ました。ここでは、やる気は空回りし、まったく上手くいかなかない毎日でした。初回の授業は聞いてくれたものの、甘い教師だと思われたのか、次の授業では頑張って作ったプリントも、見ようともしない。そんなスタートでした。中には自衛隊あがりの定年を過ぎた男性も生徒として在籍していて「もっと威厳を持った方がいい」とアドバイスをいただいたのもいい思い出です。私のツイッターのアイコンをご存じの方は見てわかる通り、おそらく「威厳」とは程遠い人相です(;^ω^) anf先生ではないですが、自分の「指導力」のなさに打ちのめされ、悩みながらやりましたが、やはり上手くいかず、生徒とぶつかるに日々でした。授業を含め当時の先生方には本当にお世話になりました。フォローなどかなりご迷惑をおかけしたと思います。ここで分かったのは「授業を聞くのは生徒にとって当たり前ではない」ということです。ほんとに衝撃的でした。ほんとに困って、担任の先生に普段はどんな様子なのかを聞いたり、部活を見に行ったり。文化祭にもお邪魔しました。そんな中で「授業どころじゃない」生徒がいることを知れたことは僕にとって大きなことだったと思います。もちろん授業も同僚の先生に、どんな風に授業をされているかも聞きました。幅広い層の生徒と先生がいらしたので様々な年代の英語の歌もやってみたりしました。そんなこんなで精一杯やっていたら、少しずつ授業を聞いてくれる子が増えました。また、定時制勤務なのに全日制の教頭先生にも面接の練習などをしていただくという機会にも恵まれ、試験もがんばり、いよいよ正式採用の通知が届きました。

 勤務先が分かる日はドキドキしていたと思います。電話をとって聞いた勤務先は聞いたことのない高校です。調べてみると定時制であることが分かりました。全日制でやりたいんだ!という希望は本当に全くなかったのですが、まさか初任校も定時制になるとは。なんというめぐりあわせだと思いました。

 自信はありませんでしたが、約2年くらい先ほどの職場で非常勤講師の経験があったので「こうしたらいいかな?」というアイディアはたくさんあり「興味を持てるようにする」「わかりやすく説明する」ような授業をしようと文字通り精一杯頑張りました。過去の努力が生きたのか、非常勤講師の時よりは「授業」らしい「授業」をすることできるようになった実感がありました。ただ、前の学校は「エネルギーが余っている子」が多かったのに対して、初任校は何らかの理由で「学校に通えなくなった」生徒と「エネルギーが余っている子」が混在するとても特別な空間でした。ここで先輩の先生方に教わったり、時には背中で語ってくださったり、生徒自身が語ってくれたことが私の教員としての一番の礎となっています。

 2年目になると担任のクラスを持ちました。そこで「授業」だけでなく様々な場面で生徒と関わることで、本当に多様な生徒、それぞれの価値観があることを知りました。そんなこと考えたことなかった!そんな理屈ある!?みたいなこともしばしば。詳細は書けませんが、追いかけっこもしたし、家庭訪問もかなりしました。

 そんな精一杯な日々の中で気づいたのは「どんな生徒も出来るようになりたがっている」ということです。それが確信に変わりました。それは授業だけでなく、はじめは部活で感じたことでした。でもそれが悔しくもあり、試行錯誤の毎日でした。授業偏重になっていたと思いますし、顧問を一緒にもってくださった同期の先生にもかなり迷惑をかけてしまっていました。それでも部活で全国大会に連れて行ってもらったこと、そこで顧問の先生方と話したこと、それまでの生徒との衝突ややりとりは何より刺激的でした。ほんとに僕はほとんど力になれませんでしたが、本当に宝物のような経験です。

 授業で生徒が頑張って、わかってできるようになって自信をつけていく。交友関係も広がる。クラスメイトの見方も変わる。時に「よっしゃー!」と喜び、時に「くそー!」と夢中になって練習する。そんな授業を目指して迎えた5年研の校内公開授業では、尊敬する先生方も見に来てくださり、多くのアドバイスとお褒めの言葉もいただきました。学校が変わっても未だにオンライン飲み会をする同期の先生2人も見に来てくれて「まじですごかったです。なんで先生を待ってる間、生徒は練習して待ってるんですか?部活みたいな授業がしたいって初任のころに言ってたの覚えてますけど、最初は「は?」って感じでした。でもいま分かりました。部活もあれくらいやってくれていいのに!」と率直な意見をもらえました。

 まだまだ書ききれないというか、言葉にすることで漏れていったり、うまく伝わらないところがあると思いますが、今の自分を見えないところで支えている経験だと思います。現任校でも、必要以上に自分を責めてしまう生徒や、クラスの友人関係に悩む子から相談を受けたら、「こんな自分だけれど、力になれることもあるかも。こんなことをしてみようかな?それともこういう話し合いからかな?」とか考えがいくつか思い浮かぶようにはなりました。タイトルは語弊を招きかねないものですが、何も「定時制に行けば万事解決!」とか「定時制を経験すれば、どこでもやっていける」とか、そういうことが言いたいわけではありません。自分の想像しないようなことがあっても、威厳があるタイプの教師でなくても(笑)?、生徒たち、先生方、家族や友人のおかげで、なんとか頑張ってやっていけそうです!というような『魔女の宅急便』のラストのようなご報告でした。もしよろしければ、こちらのポッドキャストもご視聴ください。〈[058] すべての高校教師は「定時制」を1校以上経験すべきだ #PC008(Lindbergh) (substack.com)