ラウンダバウト

英語を教えています。自分の授業改善のためだったり、好きなモノ、コトをつづっていきます

乱暴な単語指導

1.きっかけ

 本日は「英語教育ユニバーサルデザイン研究会」に初めて参加してきました。きっかけは学生の時からお世話になっている中学校の先生です。私は関東にある定時制高校に勤務しているのですが、その先生から「ツイッターでの悩みを見ていると、〇〇先生のFacebookの投稿は勉強になると思うよ。お話しておくから友達申請してみなよ」というものでした。それ以来〇〇先生のFacebookを拝見するようになり、たしかその中でこの勉強会の記事を見つけたと記憶しています。なんと本日はご本人様もいらっしゃるという。

 2.乱暴な単語指導

 閑話休題です。タイトルは本日の勉強会に参加して感じたことです。定時制で教えるようになって2年目くらいから、嬉しいことに「読めなかった単語が読めるようになってきた」「単語の書き方が分かってきた気がする」というような授業の感想をもらうことが出てきました。入学時点ではアルファベットが覚束ない子も少なくないんです。申し訳ないことに卒業するときにアルファベットが怪しい子がちらほらいます。それをなんとかしたいというのが参加理由です。単語指導というタイトルですが、「音と文字を一致させるための単語指導」が今回のテーマです。私がしていたことは簡単には以下の通り。1時間の授業だけでなく継続的にやっていきます。

⓪ アルファベットの成り立ちを紹介する(⇒時間があれば「アルファベットの場合分け」活動)

① 音のアルファベットを紹介する

② 音のアルファベットを言えるようにする

③ 音のアルファベットを書けるようにする

④ 音の足し算だけで読める単語を扱う(「パパイヤジュース」などで読めるようにする)

⑤ 教科書の単語でフォニクスのルールに則っている単語をとりあげて指導する

⑥ 単語を指導する時には必ず「ポン(詳しくは靜哲人先生の『英語授業の心・技・体』をご覧ください。)音節を確認しつつ、音と文字が一致するように、声に出させながら、まとまりごとに書かせる」

⑦「音 ⇒ つづり」の単語テストの採用

⑧ 組み合わさった文字(th、chなど)、マジックeの指導

⑨ 教科書本文に生徒がつまずきそうなものが出てくるたびに「音のアルファベット」戻ったりして練習させる

*教科書本文を写させるときは、中学校のように4線が入ったものに書かせる(松井先生のツイッターを見てx-height が広いものを作成)

というものです。恥ずかしながら、個人的には「なかなか頑張っているのではないの?」と思っていました。ですが、今日その考えは崩れ去りました。なんて乱暴な単語指導をしていたんだと・・

 3.参加しての感想

 村上加代子先生を講師に迎えてのワークショップ。『読み書きが苦手な子どものための英単語指導ワーク』の実践編ということで、その指導の実際を体験してきました。まず、考えると当たり前ですが文字の読み書きに関する認知機能には様々なものがあり、何で躓いているかによって手立てが変わってくるということです。例えば視機能が弱い子にはビジョントレーニングなどが有効というような。そして、そもそも英語という言語はディスレクシアの出現率が10%以上もある言語なんですね。そんな中、子どもたちがつまずいていることはそれぞれ異なるわけで。村上先生の提案は「それぞれの子どもの躓きを見とり、その子にあったやり方を提供する」という風に受け取りました。衝撃的だったのは、英語圏でも音素認識が完成するのは小学校3年生あたりと言われていることです。語著書でも触れられていますが、そりゃ入門機にいきなりフォニクスを導入してもつまずく子がいるはずだと納得です。だって、まだ音素認識が不十分かもしれないんですもんね。そんなに急ぎすぎてはいけないのだなと、自戒をこめて。

 今回のワークショップはその音素認識がある程度できた次の段階(基礎的な単語のデコーディング)に特に焦点をあてたものでした。つまり、アルファベットの小文字の読み書きがほぼできるというのが前提条件です。そんな中、「単語を初見で読めない、スペリングが苦手」といった子たちが対象です。非常に簡略して表すと、

① 音+文字(2音の音素操作ー2文字の単語)

音+文字(オンセット₋ライムの指導ー3文字以上の単語)

音+文字(音節操作ー多音節の単語)

という感じです。

肝心の指導の場面では音素のブレンディング(足し算)とセグメンティング(割り算)が印象的でした。視覚を使ったり、聴覚を使ったり、身体を使ったり、多くの感覚を使った指導でした。それにしても、村上先生の話すリズムや時折強引なところはおちゃめな感じて素敵でした。乗せられてついついやってしまう感じです。ふだんは読み書きに困難を持つ小中高生相手に教えてらっしゃるとのことだったので、それが伝わってきました。包丁が登場したときなんかは小学生を教えるときに思いついたのかな?なんて考えたりしてしまいました。(参加してない方には伝わらなくてすみません)

 さらに細かい指導の詳細は書籍や村上先生のお話を実際に聴いた方がよくわかるので、ここでは省きますが、

・文字を見せる前にやれることがこんなにあるんだ

・文字を見せたあとにも細かな工夫がいるんだ

・文字数が変わるだけで読めなくなる/書けなくなる生徒が多いから、2→3文字以上でのケアも必要なんだ

・多音節はどうやって指導するんだ?

なんてところは、今の私の単語指導に風穴をあけられた感じです。他にもたくさんあって、これまで私がしてきたことは「指導」なんて呼べるものではなく、生徒の時にちょっとかじった程度のスポーツを、「部活は◇◇が専門です。指導できます。」なんて言っちゃうくらいの恥ずかしさでした。そして、大学院で学んでいたころ、靜先生がよくおっしゃっていたことも思い出しました。「フラッシュカードを初学者に見せて、いたずらにフラッシュするのを止めろ!百害あって一利なし」今はその理由が実感として分かります。明日からできること、しなきゃいけないことが見えてきた、そんな一日となりました。(そういえば靜先生がこのブログを読んでくださっていることを、まさかというタイミングで知りました、なんとご本人から^^; 「これは君のブログかい?なんか1年に1回くらいしか更新してないようだけど・・」)

 勉強会の後半では、校種ごとに分かれて「今日の学びを生かすためのアイディア・情報交換」が行われましたが、ここももっと時間があればよかったなーと。僕が咀嚼するには時間が足りなかったのが残念。いや、残念なのは私の理解力ですが・・ご一緒してくださった先生方、ありがとうございました。

最後に、村上先生の導入時のひとことで締めたいと思います。一言一句は覚えてないので要旨です。

バリアフリーよりユニバーサルデザインを考えませんか。バリアフリーというのは後からですよね。階段のスロープなんかそう。それに対し、ユニバーサルデザインはあらかじめできること。駅の改札の幅なんかがそうですね。バリアフリーも意義があることなんですけど、あれって躓かせてから補習するようなもの(笑いが起きる)。あらかじめ躓く必要のないところで躓かないようにしてあげませんか?」